御座の盆行事と盆踊り唄
A:旧暦時代の御座の盆行事(〜昭和38年)
7月6日:○朝一番鶏を合図に笹舟へ米、茄子、十八豆を添えて海へ流す。
13日:○仏前には牡丹餅(黄粉と小豆一重ね)。
○供え物としては甘藷、なんば、長豆、瓜、茄子、柿、梨、 西瓜等を重箱へ入れて供える。
○餓鬼棚を門口の傍に儲け、仏前から下げられた三飯をこれに施す。
○(昔はこの日座敷の縁先へタライと手拭を置いて精霊の来る際足を洗うとしていたが今はしなくなった。)
:○大念仏会(後に14日に変更した模様、その日特定できず)
○夜、盆踊り* (参考文献T−A)
14日:○朝は小豆粥、昼は素麺、夕は白飯(おのた土器に盛る)
○夜。盆踊り
15日:○朝はブンド粥、昼は米団子、お立ちの晩としてササケ飯、白飯、焼茄子、藜の葉、アカザの葉の胡麻醤油和え、これに唐の鏡と称してトコロテンを丸く煮固めて供える。
○精霊送りにはお立ちの晩の供え物を悉くフロシキ(里芋の葉)を以て包み、芋殻、藜の枝を添え茣蓙にて巻き燈籠とともに海へ流す。精霊流しの後は立ち火と称して門口にて松のジンを焚く
○夜、盆踊り
16日:○不動尊の縁日。近郷近在より多くの人がお参りに来る。
境内には出店が出て大変なにぎやかさである。
(15日の夜の盆踊りを終えると各村の若い衆は連れだって、御座の不動さん参りに夜道を歩いて出かけたが今はこれも見られない。)
○夕方には送り念仏の行事がある。
補記(昭和10年過ぎ頃までは新喪の家では茶屋が設けられ、念仏講の人や子供に黄粉餅や牡丹餅、お菓子を施して亡者の霊を弔った。
*二十日盆 (各地区)お盆最後の日で、仕事も早いめに終え仏壇には燈明をつけ素麺を供えた。
踊りも最後の夜だといってよく踊ったが今はなにもない。初盆の家の飾り物もみんな無くなり普段の生活に戻る。
(志摩町史&森田利一さんより)
B:現在の御座の盆行事(昭和39年〜)
全般的に:供え物は旧暦と基本的に変わらず。
(但し、ごく最近ではしきたり通りではなく、スーパーなどの売り物で間に合わせる家庭も多くなった。
8月1日:○新喪の家の初寄り(その年のお盆行事予定の相談)
6日:○寺に施餓鬼棚の設置(新喪による作業)
○寺米
○墓の清掃(お盆を迎えるために、村中総出で自分の家の墓を掃除し、墓 地の周囲の草を刈り、砂利を敷き綺麗にする。
墓近くにある昔の葬式場所の草刈りは新亡連中がしたが、今はその必要性もなくなった。)
○笹舟流し(笹舟には一艘舟と二艘舟を用意する)
7日:○7日盆、軒燈籠立(新喪、晩より点灯)
10日:○盆礼配り(最近は9日から) 、お供え
13日:○仏壇飾り、餓鬼棚設置
14日:○朝、新喪の大施餓鬼、墓参り
○夕、大念仏(名のりの文が以前と変わっている)
○夜、盆踊り(現在の盆踊り唄はC:を参照)
15日:○一般の大施餓鬼(但し精霊送りが午前10時頃になってから中止に)
○精霊流し(午後3時頃に変わり、今年は各家庭での処理となる)
主なお供え物→西瓜,トウモロコシ、柿、ほほづき、十八豆、トコロテン (空鏡)
○夜、盆踊り
16日:○不動尊の縁日
○念仏始め(今年は?)
○夕、送り念仏
○夜、盆踊り
C:盆踊り唄
(解説)「御座郷土史」(但し原本はない。その内容は「御座村地誌」と合本になって「御座郷土地誌」として残っている。)には次の記載がある。
「きそきそ節は木曽節の一つの名目にして木曽節は信州木曽踊の小唄節を謂ひ、木曽の山里で躍る。古風の木曽踊の名目にきそきそ節と称するものなり。其の唄文句も本村のものに似寄て居る。」
踊り方も似ているかどうかは不明だが、これを見ると御座の盆踊りの文句も色々な地域のものを寄せ集めた観がある。古老からは、現在のものは昔と比べ、テンポが速くなっているとか、又、卑猥な文句もおおらかにうたっていたが、削除されてしまったとかの話があった。
○(音頭とり)尊い寺は 御門から知られるエイ
(踊り手) サー清水寺のソリャ尊さよ
(音頭とり) ヤレ尊さよ 清水寺のエイ
(以下同じ様式で)
○唐橋瀬田の からかね擬宝珠(ぎぼし)
映れし水に膳所(ぜぜ)の城
○来いとは言葉 御座れとは情け (きそきそ節にあり)
ぜひ来いならば 文たもれ
○やりたし文は 書く手は持たず (きそきそ節にあり)
白紙やるぞ 文と読め
○想いに想うて やる玉章(たまずさ)*を *手紙のこと (きそきそ節にあり)
落とした川の まん中へ
○落としたも道理かれ一瀬や二瀬の川でなし (きそきそ節にあり)
三瀬 四瀬 七瀬 八瀬の川
○想いと恋を笹舟にのせて (きそきそ節にあり)
想いは沈む恋は浮く
○来い来い小女郎髪を結うてとらしょ (きそきそ節にあり)
島田に髪をしゃんと結うてとらしょ
○お前と妾(わし)は奥山の小梅
落つれどなれど 人知らぬ
○西国姉は 妹は四国 (きそきそ節では「姉は西国」)
播磨の書写寺でめぐり逢うたとしょ
○今宵の月はお笠を召さる
みな一列の笠を召す
○名所は奈良の猿沢の池じゃ
かげさす池に三笠山
○七月の月を待ったではないか (きそきそ節にあり)
今宵はここで夜を明かす
○七月の盂蘭盆に浜に出て踊らずば
いかさまお腹に子が宿る
○踊るも舞うも今日明日限り
あさては山*のしおれ草 *嫁のこと (きそきそ節にあり)
○しおれた草を刈ろうとすれば (きそきそ節にあり)
新しい鎌の刃が折れる
○折れたが大事かれ こぼれたが大事かれ (きそきそ節にあり)
世間に鍛冶はないものか
○十七八をはらましおけば (きそきそ節にあり)
鳴くさえ烏(からす)気にかかる
○音頭取り手が御座らねばお屋敷に御座れ (きそきそ節にあり)
お屋敷の寅之助歌の天下一
○想い合うてこしらえた銀鍔(ぎんつば)鮫鍔(さめつば)小脇差
差すまい差さすまい晩にゃしもてやる
○お寺の庭の蓮華の花は (きそきそ節にあり)
今咲きかかる散りかかる
○さしたよ姉が妹もささせ
同じ蛇の目の唐傘を
○ここから見れば近江が見える
傘買うておくれ近江すげ傘を
○近江の傘が何が良て着よて
菅緒(すげお)が長(なご)てとんと着よござる
○大津の町の揚げ灯籠見えたか
上(あ)んげつ下(さ)げつ辛苦する
○塩屋の河岸を山家(やまが)じゃとおっしゃる
山家に舟が着くものか
○古市の町を夜抜けにすれば
盃音(さかずきおと)ががらりがらりとせ
○古市の町は何もかも安い
一文で女郎がより取りじゃ
○お前と妾はお倉の米じゃ
世に出ていつか ままになる
○勝五郎いざり車にのせて
初花曳くは箱根山
○見えたよあれは清十郎ではないか
よく似た笠がすげ笠が
○似たとて笠が清十郎であれば
お伊勢参りは皆清十郎
○中んぞの太鼓餅を食うたや算用が知れてきた
九つ食うたや三九二七文
○踊り子のまん中へ三尺手ぬぐいなげだした (きそきそ節にあり)
これ取る者はわしのやんやにしょ
○お夏女郎の手洗(ちょうず)手ぬぐいなんたる紺屋が染めたやら (きそきそ節では)
はしばしは紅鹿の子 中はとくさ色 お夏→おさん)
○そばがら抱いて汀へ走る (きそきそ節にあり)
渚は部屋か寝所(ねどころ)か
○山椒が胡椒へ嫁菜しょうとおっしゃる (きそきそ節にあり)
とんがらがらがらし(唐辛子)が仲人して蓼(たで)が悋気する
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